お付き合いいただいた方、ありがとうございました。
このエピローグは、ブライダルイベの高難易度クエをクリアした人のみご覧下さい(ウソ)。
前回:『ウェディングドレスッ!』は、こちら。
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【 エピローグ: ふたりのしあわせ 】
翼「……そういえば遅いな。迷っているんだろうか……」
マリア「何のこと?」
翼「こ、こちらの話だ」
無事に全ての撮影を終えたマリアが、周囲を見回している翼に首を傾げた時。
スタッフ「マリアさん、大変ですッ! 幸谷さんが……あのッ!」
慌てて飛び込んで来たスタッフに、まさかまたNGが出たのかとマリアの顔が曇る。
しかし、今回はいわば正反対の話だった。
スタッフ「新作コレクションの発表会ですよッ! 幸谷さんに指名されるなんて、すごいことですッ!」
幸谷「実は、着こなせるモデルが見つからず、未発表となっていたドレスがあるのです」
見せられたデザイン画は、ひと目で今日のドレスの更に上をいくとわかる、可愛くて美しい、そして魅力的なドレスだった。
幸谷「これは、あなたにしか頼めない。あなたの花嫁としての勇姿を、もっとたくさんの人に見てもらいたいの。──この挑戦、引き受けてくれますか?」
マリア「ええ、分かったわ。わたしに任せなさい。世界一の花嫁になってみせるからッ!」
???「そ、そんなッ!」
割り込んできた少女の声。
振り向いて姿を見るまでも無い。マリアにとって間違えようのない、その声の主は──
セレナ「姉さんが……結婚して、お嫁にいっちゃうなんて……ッ!?」
マリア「ま、待ってッ! それは誤解よッ! セレナ──ッ!」
ショックのあまり外に飛び出していくセレナと、彼女を追うマリア。
伸ばした手で妹を捕まえて抱きしめた時、マリアはセレナがクスクスと笑っていることに気付いた。
マリア「セレナ……? あなた、もしかして……?」
セレナ「姉さんに会いにこっちの世界に来たのだけど、花嫁さんのモデルをしてるって聞いて押しかけてきちゃった」
マリア「もう……こんな意地悪、どこで覚えてきたの?」
笑いながら来た道を戻ろうとする二人。
そんなセレナの手元に、突然何かが舞い込んできた。
セレナ「え? ……この花束は?」
マリア「ウェディングブーケ? いったいどこからッ!?」
隣接した結婚式場の花嫁が投じた、本物のウェディングブーケ。
それがたまたまセレナの胸に収まってしまったのだ。
セレナ「これって、わたしが次の花嫁さんになっちゃうのかな?」
マリア「なッ!? あ、あなたにはまだ早いわよッ!」
慌てるマリアに、もう一度クスクスと笑ってから、セレナは言った。
セレナ「ブーケは人の想いを伝えてくれるんだよね? だったら、このブーケは半分こ。わたしから、半分は姉さんに。幸せへの願いを込めて」
マリア「えッ?」
セレナ「だって、わたしたちは姉妹だもの。幸せを分け合えれば、もっと幸せだよ」
人と人とが出会い、想いを繋げることで、幸せは巡ってくる。
お互いが今こうして隣にいる幸せを噛みしめながら、二人は半分に分けたブーケを手に、再び並んで歩き始めるのだった。
== おしまい ==